【苗づくり】続!苗づくり・生命の息吹
【続苗づくり・生命の息吹】 2019.6.26
春から初夏へ、季節が移ろいでいき植物も動物も新たな命が誕生しています。4月に接木した穂から栄久ぽんかんの芽が出てきました!これから夏に向けてぐんぐん生長していってくれることを期待します!自然と共に暮らしていると色々なことがありますね。野生動物と人は接近すべきではないと思っていますが、遭遇してしまいました。つぶらすぎる瞳のバンビと。親とはぐれたのか、育児を放棄されたのか。まだ人が怖い存在だと認識している様子もなく寄ってきてしまいました。山に帰ってもらうために無視してその日は撤退。翌日気になって見に行くとまだいる….このままでは数日で死んでしまうだろうなと思いその日も撤退。数日後、弔いのためスコップを片手に農園に登ると…姿がない。母親と再会したのか、山に帰ったのか、どこかで息絶えてしまっているのか結果はわからずじまい。獣と戦う立場としては駆除すべきなのでしょうが、なかなかできない。矛盾していますが。野生動物と人がうまく共存していければいいのですがそれは理想論。今回出会ったのは電気柵を設置していない農園だったので、防御を固めて野生動物と人の活動圏を明確に分けるしか方法がないのでしょうね。野生動物との生活圏が近すぎます。シカもサルもイノシシもみんな来なければ戦わなくていいのに。なので、今年も防御力を上げるために7月は電気柵の整備を行おうと思います。
【苗づくり】柑橘の苗木事情
【苗づくり】柑橘の苗木事情 2019.4.15
春は意外と柑橘農家にとってやるべきことが多い季節です。収穫を終えた木を剪定し、肥料を施し、苗木を植えるのも春先、そうこうしているうちに雑草が一斉に芽吹くので刈込をし・・・その中でもタイミングが大切なのは接穂による苗づくりです。今回は苗づくりについてご紹介いたします。柑橘の苗を作る方法は接穂が一般的です。接穂は穂のクローンを作るので品質も同一になり増やしやすいメリットがあるのです。一般的に柑橘類の苗木は台木にカラタチが用いられ、カラタチに目的の品種を挿し穂で作っていますが当農園の栄久ぽんかんはカラタチ台の上に温州みかんやネーブルオレンジの中間木を接いだ木にさらに栄久ぽんかんの穂を接いで作られています。理由はなぜか。途中で園内の木をぽんかんに樹種転換したためです。今苗木を新しく作るならば中間木を用いなくてもよいのですが、代々継承してきた方法を継承しています。就農当初は知識や技術が伴わず失敗が多かったです。接穂はタイミングが悪くても活着せず穂が枯れてしまいますし、穂を乾燥させないことが重要なポイントです。気候と木々の春特有の芽の息吹を感じ取り、植物の成長ホルモンが出るベストなタイミングを見計らい一斉に接穂していきます。積算温度(ある期間の日平均気温を合計したもので農作物の栽培限界などの目安になる)もありますが、桜の開花とおおむね合致するのかなと個人的には思っています。代々継承する方法は一緒ですが、微妙に中間木の樹種を変えて成長具合に変化があるのか、味に変化があるのか、病気に強いか弱いか等々試しています。現段階で樹勢の強い品種の中間木に次いだ穂は成長が早いことがわかりました。中間木の遺伝子が穂に影響を与えるのならば早生品種を中間木に用いたら早くできるぽんかんが変異で生まれる可能性があるのではないか…など今年は新たに中間木の樹種を増やして試してみます。学生の頃はこんなに研究熱心ではなかったのに、今は面白いですね。1年に1回しか試す機会がないので何か次世代に残すことができればよいのですが。山全体を作る林業も奥が深いですが、一本一本の木とじっくりと向き合う農業もとても奥が深いです。
追記:最近では柑橘に限らず優れた農産物が国外に持ち出され、安価に生産販売されてしまうこともニュースになっています。それを防ぐのが種苗法です。登録品種は勝手に挿し穂で増やして種苗を育成者の許諾なく業として利用すると違法となります。登録品種には有効期限が20年や25年と定めがあり、新しい登録品種には苗木にPVPというマークがついていて生産番号まで付与されています。一般に出回る柑橘は全て登録品種です。有効期限が切れていない登録品種は農家であっても苗木は苗木屋さんから買わないといけないのです。栄久ぽんかんはそもそも未登録品種だから苗木を作ることができるのです。(苗木を譲ってもらえないかというお問合せをいただくことありますが、当農園は種苗業者登録を行っていないので苗木を作ることはできても苗木を販売することはできないのでご了承下さい。)